ひざまし見え太郎

たちどころによくなる

(自転車で走るなら)

   (自転車で走るなら)


 その道は狭くて
 右側に電柱があって
 他には なんにもなくて 空だけあって

 右にときどき鳥居があって
 その向こうには卒塔婆が見えて

 しばらくするとあぜ道で
 どこかで水が流れている

 牛蛙が鳴いて 草がきつく匂って
 嫌になる 薄くかすんだ青い空

 振り返ると 道は崩れ落ちていたりして?

 かと思えば桜並木で
 雨と花弁はしたたり落ちる

 夏の真昼の住宅街に
 子供が一人と三輪車

 突然 私の家が現れるので 入ってみたら
 そこには 狂った母がいたりして?

 …………
 ………………

 気がつくと 日は暮れかけていて
 ただ優しいだけの夏の夕空と
 それをたしなめるように広がる雲とがあって

 ぽつりぽつりと街頭が点き
 どこからか夕餉の匂いがして

 蝉がすっかり鈴虫に変わる頃
 私の自転車に乗る人はなく

 私は それを 月の近くで眺めていたりして?


 そんな道がないだろうか